「UAEで会社を作るならESRの対応が必要」——数年前まで、これは会社設立時の定番の注意事項でした。今でも検索すると、この前提で書かれた記事がたくさん出てきます。
ただ実は、ESRの単独での申告義務は、2024年の制度改正でほぼ終了しています。にもかかわらず、この事実を知らないまま「今年もESR申告をしないと」と考えている個人経営者の方に、これまで何人か出会いました。中には、もう不要になった申告のために、毎年代行費用を払い続けていたケースもあります。
古い情報がネット上に残り続け、更新されないまま検索結果の上位に居座っている——これは会社設立・ビザ関連の情報ではよくあることです。今日は、ESRという具体例を通じて、この制度が実際どうなったのか、そして今なにを気にすればいいのかを整理します。
そもそもESRとは何だったのか
ESR(Economic Substance Regulations/経済的実体要件)は、2019年にUAEで導入された制度です。国際的な租税回避対策(OECDのBEPSプロジェクト)に対応する形で、特定の事業活動(銀行、保険、持株会社業務、知的財産業務など)を行う企業に対し、「UAE国内に実体のある事業活動をしているか」を毎年申告させる仕組みでした。
対象企業は、毎年「ノーティフィケーション(通知)」と「レポート(報告)」を提出する義務があり、怠ると最大5万AEDの罰金が科される可能性がありました。
2024年の制度改正で何が変わったのか
2024年、Cabinet Decision No. 98 of 2024(2024年10月公表)により、2022年12月31日以降に終了する会計年度については、ESRの申告義務そのものが撤廃されました。
具体的には、
- 2023年・2024年・2025年・2026年の会計年度について、ESRの通知・報告は不要
- 撤廃に伴い、この期間の未申告に対する罰金も科されない扱いに
- すでに罰金を支払っていた場合は、還付の対象になる可能性がある(還付の実務手続きは別途整備)
一方で、2019年〜2022年の会計年度分については、当時の義務がそのまま残っています。この期間に対象事業を行っていて未申告だった場合、当局から追及される可能性は今も残っているため、注意が必要です。
なぜ撤廃されたのか
理由はシンプルで、「実体があるかどうか」を見る仕組みが、UAE法人税(2023年導入)のQFZP(適格フリーゾーン事業者)制度に統合されたからです。
フリーゾーン企業が法人税0%の優遇(QFZP資格)を受けるには、今も「UAEに実体があるか」を示す必要がありますが、これは別建てのESR申告ではなく、毎年の法人税申告の中で判断される仕組みに変わっています。
つまり、「ESRという名前の手続き」はなくなりましたが、「実体を伴った事業をしているか」という本質的な部分は、法人税の枠組みの中で今も生き続けている、という理解が正確です。
今、個人経営者が気にすべきこと
- 新たにESRの通知・報告をする必要はない(2023年度以降)
- 2019〜2022年度に対象事業を行っていた場合は、過去分の記録を6年間保管しておく(あとで問い合わせが来る可能性に備えて)
- QFZP(法人税0%優遇)を受けたい場合は、実体要件を満たしているか、法人税申告の中で確認する必要がある
- ネット上の古い情報(「毎年ESR申告が必要」という記述)を信じて、不要な代行費用を払わないよう注意する
さいごに
ドバイでの会社設立・運営に関する情報は、想像以上にアップデートが早いです。今回のESRのように、「数年前は常識だったことが、実はもう変わっている」というケースは他にも少なくありません。
こうした記事をあえて書いているのは、次の3つの理由からです。
- 古い情報を信じたまま動いている人が、実際にいるから:検索結果の上位に、更新されていない情報がそのまま残り続けていることは珍しくありません
- 「今の情報をきちんと追えているか」は、そのまま信頼につながるから:制度が変わったこと自体を知らない業者に依頼してしまうと、判断を誤るリスクがあります
- 知らないままだと、不要な出費が続いてしまうから:もう不要な申告のために代行費用を払い続けている、というのは避けられるはずの損失です
古い情報のまま判断してしまうと、不要な手間やコストがかかることもあります。今の制度がどうなっているか気になる方、「もしかして自分も古い情報のまま動いているかも」と思った方は、LINEからお気軽にご相談ください。












